太陽系外惑星の新機軸:地球型惑星へ

文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型) 23年度~27年度

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採択公募研究のご紹介⑦

可視高精度分光撮像測光による系外惑星大気の研究
土居 守(東京大学)

 

系外惑星の大気の成分を調べる一つの方法として、主星が惑星に掩蔽される面積の波長依存性を用いる方法がある。惑星大気の成分が異なると、掩蔽する面積が波長により有効的に異なることを利用し、減光量の波長依存性を精密に測定する。通常は広帯域撮像を行うか、マルチスリット分光を行うことで実施される。本研究では、代表者らが開発をしてきた、Dichroic Mirror Camera (DMC)を用いて、撮像方式でありながら15のバンドで同時に掩蔽の高精度測光を行うことで、他に例を見ない掩蔽観測を実施する。

DMCは、下に示すように、14枚のダイクロイックミラーを用いて、390nmから950nmの範囲を15のバンドに分割して撮像可能な装置である。2007年から2008年にかけて広島大学東広島天文台の口径1.5mかなた望遠鏡を用いて試験観測を行い、約4.5分角直径の視野を、シーイングリミティッドな状態で15バンド同時撮像に成功した(Doi et al. 2008, SPIE Proceedings)。系外惑星の掩蔽のみならず、ガンマ線バーストや小惑星、活動銀河核など、短い時間に明るさや色が変化する天体の観測にもっとも有効性を発揮するが、様々な天体の可視でのSpectral Energy Distributionを大変効果的に取得することも可能である。

doi-fig

          可視15バンド同時撮像装置DMC外観               DMCの波長感度特性(改良前)

本研究では、まず、DMCの15個の検出器と読み出しエレクトロニクスを、より高感度で、高速に読み出せるものに交換をし、系外惑星の掩蔽観測がより容易となるように改良する。検出器については比較的高価であるが、平行して採択された別の科学研究費補助金も用いながら進める。望遠鏡としては、国内最大口径の、西はりま天文台のなゆた2m望遠鏡に搭載できるように改良する。これらによって、感度はおよそ3倍に、また読み出し時間はおよそ1/25の約5秒となる予定である。

スケジュールとしては、2015年前半までに改良を実施し、2015年後半に観測を実施することを目標とする。観測対象については、2015年半ばでの新たな候補も含め、また先行研究の観測状況も含めて選んでいく。例えばIバンドの明るさが11magのG1214(M4.5型星)では、10秒積分で信号雑音比500に達することができる。実際には、感度補正などの系統誤差が最終的な誤差を定めると思われ、ガイダーを用いてできるだけ同じ状態で撮像観測を行うなど、経験者や観測所の方々のご協力も得て、様々な観測的努力を行って、できるだけ高い精度の観測を実施していきたい。

なお、もともとの案では、同じく代表者らが開発してきた、長波長に感度の高い分光撮像装置Line Imaging and Slit Spectrograph(LISS)に専用のマルチスリットを製作し、低分散分光による掩蔽観測を行う予定であった。しかしながら、採択後に関係者と相談を行った結果、すでに同様の観測はいくつも行われていること、またDMCの検出器の交換にはより高額の予算がかかることから、こちらについては優先順位を落とし、改良したDMCによる観測を優先する。