詳しい内容
本領域の目的
1995 年に太陽以外の恒星を公転する惑星(系外惑星)が発見され、私たちに新しい宇宙観をもたらしました。太陽系内の8 個の惑星に対し、すでに500 個を超える系外惑星が発見されており、その多くは、太陽系の惑星からは想像もできない多様性を示しています。なかには、地球のように岩石でできた惑星も存在します。また、表面に水が液体として(つまり海が)存在できる惑星もあり、生命を宿している可能性もあります。
日本には、「京都モデル」に代表される太陽系形成論の伝統があり、系外惑星の形成理論で世界をリードしています。また世界に先駆けて原始惑星系円盤の電波観測を開始し、最近ではすばる望遠鏡で様々な形の円盤を発見、系外惑星の直接撮影にも成功しました。
このような状況のなか、本領域では、日本における研究をさらに発展させるため、従来の枠を超えた系外惑星の研究を展開します。具体的には、地球のような岩石惑星で、表面に海が存在する可能性のあるものを探索します。また、主星近くにある惑星を直接撮影、分光して大気の性質を調べると同時に、原始惑星系円盤から惑星ができていく様子を、これまでにない高い解像度で明らかにします。そして、包括的な系外惑星形成理論や惑星大気理論を推進し、観測研究と理論研究を融合することによって、惑星の起源、形成、進化を統一的に理解することを目的とします。
本領域では、天文学と惑星科学の連携を強化し、生命科学など他の分野との連携も模索しつつ、新たな研究領域としての系外惑星科学を確立することも重要な目的です。系外惑星の発見から十数年が経過し、この分野に興味を抱く学生や若手が大幅に増加したことから、世界的フレームワークの中で若手を育成し、将来の系外惑星科学を担う研究者を育てます。
本領域の内容
本研究では、以下の計画研究が中核をなします。
- A01: ガス惑星の直接撮像・分光と地球型惑星の検出
- この研究では、様々な手法を用いて地球型惑星を探索すると同時に、ガス惑星を直接検出、分光して大気の特徴を調べます。
- A02: 系外惑星大気の数値モデリングと形成進化理論
- この研究では、包括的な惑星大気理論を構築し、分光データを解釈して惑星大気の化学的性質を解明します。
- B01: 円盤から惑星へ
- この研究では、ALMAやすばるを用いた観測を推進し、円盤から惑星が形成されていく過程を調べます。
- B02: ハビタブル地球型惑星の形成理論
- この研究では、生命存在が可能な惑星の形成をも含めた惑星形成理論を展開し、観測との比較を通して、包括的な惑星系形成理論を構築します。
期待される成果と意義
系外惑星の研究は、「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか(ゴーギャン)」という人類の根源的な問いに対して、科学的に答えようとするひとつの試みであり、今世紀の科学研究における最重要課題のひとつとなるでしょう。本領域では、このような基礎科学の分野で、日本が主導的役割を果たし、国際的な貢献を行うための基盤が作られるものと期待しています。
生命存在可能な岩石惑星の探索、系外惑星大気の詳細な分析、手に取るように見えてくる惑星の形成。このようなテーマは極めて興味深いものであり、社会的にも大きな興味を持たれています。
また、ここ10 年で系外惑星に興味をもつ高校生が増え、大学で勉強したい、さらに大学院に行って研究したい、という声をよく聞きます。できるだけ多くの大学で、彼らの興味に応えられるようにすることも、本研究の重要な意義だと思います。
図1:研究領域の概要図