太陽系外惑星の新機軸:地球型惑星へ

文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型) 23年度~27年度

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採択公募研究のご紹介⑥

深部対流モデルによる系外惑星大気運動の多様性の数値的研究
竹広 真一(京都大学 数理解析研究所)

 

近年、天文学的手法の技術の発達により多くの太陽系外のガス惑星が発見されるようになった。これらの新たに発見された系外ガス惑星では、これまで知られて いた木星・土星・天王星・海王星に見られる惑星大気の循環とパターンの多様性から想像するに、より多様な惑星表層形態を共なっていることが期待される。 本研究は,汎用的なガス惑星大気モデルを運用したパラメター研究により、系外惑星大気の表層運動形態の多様性を調べることをめざすものである。

太陽系外系外ガス惑星大気モデリングの研究はここ数年内に始まり、現在さかんになりつつある。そのような研究で用いられているモデルは、浅水モデルあるい はプリミティブモデルといった「浅いモデル」、すなわち、太陽放射の影響を受ける成層安定な惑星大気表層内での水平方向に広く鉛直方向に浅い横長の大気循 環しか表現できな いものでしかない。一方で、系外惑星よりも精密に観測され良く研究されている太陽 系内のガス・氷惑星大気に関しては、「浅いモデル」の 他に惑星内部からの熱流の影響により引き起こされる対流運動を考慮した「深いモデル」が提唱されている。これら「浅いモデル」と「深いモデル」はそれぞれ 独立に研究され惑星大気表層運動と、深部対流運動が別々に扱われてきた。そのような研究の状況の下で、われわれははガス惑星の表層大気と深部対流を同時に 扱うことを試みた基礎的な研究を行ってきている。

系外ガス惑星においても、系内ガス・氷惑星大気で考えられているように、内部熱源に伴う深部の大気運動が表層の循環形態に影響している可能性がある。本研 究は、系外ガス惑星大気の表層と深部の流体運動を同時に表現できるモデルを用いて、木星などで想定される状況を出発点として外部パラメターをさまざまに変 化させたときの表層大気運動形態の遷移を調べることにより、系外ガス惑星の表層の流体運動形態の多様性を追求する。

系外惑星の研究を行う意義の一つに, 太陽系以外の惑星を新たに知ることに加えて, あらためてわれわれの太陽系を良く知ることにつながることがあげられる。 パラメター研究によりあきらかにされる系外惑星大気の多様性を認識することで、木星などの太 陽系内ガス・氷惑星の大気循環の理解が深まり,普遍的あるいは 特異な特徴を知るこ とができると期待される。

 

平成26年度は、平成24-25年度において構築した回転球殻非弾性系ガス惑星大気 モデルを用いて、非同期回転するガス惑星の大気循環の多様性を調べる数値実験 を遂 行している。惑星深部からの熱流と、中心星からの放射による外側境界への経度方向 に一様な熱流を熱強制として与え、それらによって引き起こされる表 層および深部循 環形態を調べている。

 

 

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図 1 は従来の「浅いモデル」による研究と同程度の大気層の厚さを計算領域として設定し、木星の惑星パラメターを用いて計算した大気循環の表面東西流分布で ある。80 m/s程度の赤道逆行ジェット(自転と逆方向)と極域の順行ジェット(自転と同方 向)が形成されている様子が見られる。中緯度帯には顕著な縞状構造は見 られない。これに対して図2は大気層の厚さを2倍(領域下端での圧力が5倍)にした場合の大気循環の表面東西流分布である。図1にくらべてジェットの振幅が大き くなっている。200 m/s 程度の順行および逆行ジェットが交互に赤道領域低緯度帯に形成されている。中高緯度帯に弱いながらも縞状構造が観察される。

今後は惑星自転速度・渦粘性熱拡散率・大気層の厚さなどを変化させ、循環形態および温度分布の遷移を観察すること、ならびに惑星表面から熱強制を昼側のみ に固定した同期回転ガス惑星(ホットジュピター)を想定したパラメター研究を行う予定である。