太陽系外惑星の新機軸:地球型惑星へ

文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型) 23年度~27年度

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星の数ほどある系外惑星

 

 太陽以外の星にも惑星は回っているのか。どれくらい重たい惑星が、中心星からどれくらい離れたところを回っているのか。またそれらの数は多いのか少ないのか。20年前、太陽系しか知らなかった我々は、これらの疑問に対する答えを知らなかった。しかし、現在では数千の多様な惑星系が発見され、その答えがわかりつつある段階にきた。平均すると、文字通り星の数ほど、系外惑星も存在することがわかってきた。これらの観測事実は、太陽系を含め、惑星系がどのようにして誕生するのかを解明する手がかりとなる。そのため、今現在も多くの観測グループが競争するかのように新たな系外惑星を発見しようと、様々な方法を駆使して研究が行われている。

 系外惑星は暗くて、地球から見ると相対的にとても明るい中心星がすぐ近くにいるのでコントラストが非常に大きく、系外惑星を直接観測することは非常に難しい。そのため、今知られている惑星系のほとんどは、ある星を注意深く観測してその星を中心星として惑星が回っている証拠をつかむ、という間接的な方法によって発見されている。この間接的手法は、中心星の近くを回るような惑星、太陽系で言えば地球軌道の内側を回るような惑星に対して感度がある。その結果、地球軌道よりも外側を回るような惑星の発見数は、中心星の近くを回る惑星発見数と比べるとうんと少ない。惑星形成を解明するためには、このような外側の惑星の分布を詳しく知る必要があり、そのための手法の一つが、我々のグループが研究している重力マイクロレンズ法である。

 重力マイクロレンズ法も間接的な方法ではあるが、中心星の明るさではなく、中心星と惑星の重力を間接的に捉えるという、ちょっと込み入った系外惑星の発見方法である。光が重力の影響で曲がるという一般相対性理論に基づいた重力マイクロレンズ現象をうまく利用したものである。重力マイクロレンズ現象とは、ある遠くの星(背景星)を見ている時にたまたま手前に別の星がいたとすると、手前にいる星の重力の影響で背景星からの光が曲げられてしまい、それらが地球に集光して、背景星が明るくなったように見える現象である。我々から見て、手前の星と背景星が一直線に並んだ時に最も明るく見える。手前の星も背景星も太陽系のように銀河系の中を自由に動いているのでこのレンズ現象は時間変化し、背景星の明るさの時間変化を観測することができる。この手前の星に惑星が付随していて、さらにその惑星が絶妙な位置にいるとき、背景星からの光は惑星の重力の影響でさらに曲げられて、複雑な増光パターンを見せる(図1)。

 この複雑な増光パターンを詳細に観測できれば惑星発見となるが、そう簡単ではない。重力マイクロレンズ現象自体が非常に珍しい現象なので、たくさんの星を見る必要がある。また、惑星の証拠となる複雑な増光パターンは短期間で起きるので、頻繁に観測する必要ある。例えば、海王星のような惑星を一年間に一つ発見するためには、一千万個ほどの星を数十分に一回の頻度で観測する必要がある。これを実現するため、我々MOA(Microlensing Observations in Astrophysics)グループは、ニュージーランド南島にあるマウントジョン天文台に口径1.8mの専用望遠鏡(図2)を設置し、銀河中心方向を毎晩観測している。星が密集している銀河中心方向は、重力マイクロレンズ現象の探査に最適である。また、より多くの星を捉えるため、望遠鏡は広視野であり、専用の光学フィルターを用いている。このように 最適化された望遠鏡とストラテジーで 重力マイクロレンズ探査を行い、他のグループと共同で年間約10個の惑星を発見している。中心星に近いところを回る惑星の発見数と比べると、重力マイクロレンズ法で見つかった惑星の発見数はまだまだ少ない。しかし上でも述べた通り、中心星から離れたところ、ちょうど木星軌道付近を回る軽い惑星は、他の手法では見つけることが難しく、これらの惑星発見数を増やすことが惑星形成の理解へとつながる。

 また、重力マイクロレンズ法では、何らかの理由で中心星からはぐれてしまった惑星質量天体を発見することができる。惑星の定義は、「恒星の周りを回る」ということなので、このような天体を「惑星」と呼んでいいのかわからないが、これらの天体は浮遊惑星とも呼ばれている。これまでの我々の研究で、木星質量程度の浮遊惑星は、恒星の数と同程度存在することがわかってきた。惑星系が形成される途中で、その系からはじき飛ばされてしまった天体が浮遊惑星であるなら、“星の数ほど”存在する浮遊惑星をも説明できるような包括的な惑星形成論が必要である。今後も、重力マイクロレンズ現象の観測によって新たな発見を続け、系外惑星の分布や惑星形成過程への理解を深めて行く。

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鈴木大介(ノートルダム大学)