太陽系外惑星の新機軸:地球型惑星へ

文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型) 23年度~27年度

ホーム > 研究者コラム > 系外惑星が誕生しつつある現場を探る

系外惑星が誕生しつつある現場を探る

前回のコラムでも触れられていましたが、初めて太陽系外惑星が発見されたのは1995年のことです。しかし、これに先立つ1980年代半ば、系外惑星の観測研究にとって重要な対象がもう一つ認識され始めていました。若い星をとりまく、惑星系の母胎とみられる円盤(原始惑星系円盤)です。

系外惑星の発見より前から、その母胎を認識できたのには理由があります。当時すでに、太陽系の誕生を説明する理論的枠組みは確立していました。生まれたての太陽を取りまく円盤(原始太陽系星雲)の中で、地球を含む惑星が形成されたとするシナリオです。一方、1980年代半ば以降、多くの若い星の周りに円盤存在の兆候が捉えられ始めましたが、そこから推定された円盤の大まかな特徴は、原始太陽系星雲で考えられていたものと良く似ていることがわかったのです。このことから、若い星の周りにある円盤もまた、惑星系の母胎に違いないと考えられるようになりました。

その後、観測研究の進展に伴い、原始惑星系円盤の理解も着実に深まりました。例えば、当初の「原始太陽系星雲と似ている」という大雑把な理解から、円盤ごとにかなり異なる性質を持っていることも分かってきました。これらは、系外惑星系が示す多様性の起源ではないか、とも考えられています。とはいえ、系外惑星に対する視界が新発見をきっかけに劇的に拡大したのと比較すると、いささか地道な進捗だったといえるかもしれません。

得られた偏向強度

しかし、山登りをしていると突然眼前に見事な景色が現れる瞬間があるように、研究でも一気に展望が開けるときがあります。原始惑星系円盤の研究は、今まさにその瞬間を迎えつつあるといえます。最近の「すばる望遠鏡」による観測では、形成途上の惑星が刻み込んだと思われる構造が、円盤中に次々と見出されています。その一例が、HD169142(※)という恒星に対するものです。新型惑星探査用カメラ「HiCIAO(ハイチャオ)」によって取得された最新の赤外線写真では、形成途上の惑星の影響とみられる溝状構造や非対称な模様が、円盤内にはっきりと捉えられています。これらの結果は、たまたま幸運に得られたというよりも、観測技術の進歩が、惑星誕生の現場を直接調べられる一線をついに越えたことを象徴しています。(※図)

HiCIAOの他にも、南米チリで建設が進められている大型電波望遠鏡「アルマ」が、昨年より稼働を始めました。これらの装置をフルに活用することで、円盤中で惑星系が形成されている現場をさらに捉え、その過程の理解を深めていきたいと考えています。ぜひ、今後の展開にご期待ください。

(研究代表者 百瀬宗武)

※「HD169142」についての詳細はこちらをご覧ください。また、その他のすばる望遠鏡の成果として、SAO 206462という星の円盤に関するものの解説はこちらをご覧ください。