太陽系外惑星の新機軸:地球型惑星へ

文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型) 23年度~27年度

ホーム > 研究者コラム > 私たちはどこから来たのか。私たちは何ものか。私たちはどこへ行くのか。

私たちはどこから来たのか。私たちは何ものか。私たちはどこへ行くのか。

ゴーギャンが絵で表現しようとしたテーマは、知性をもつ人類が何千年以上にもわたって追い求めてきたものである。この根源的な問いに、私たちは、今、初めて科学的に意味のある答えを見出そうとしている。

観測によって、太陽以外の星の周囲にも、太陽系にあるような惑星(系外惑星)が存在すると示されたのは、1995年のことである。それは木星のような重たいガス惑星で、中心星のすぐ近く、太陽系で言えば水星の軌道よりも内側に位置していて、4日で中心星の周囲を公転していた。

世界中で系外惑星の研究が始まった。地球のような惑星はないか、生命を宿す可能性のある惑星はないか、どうしたら生命の存在が確認できるか。系外惑星は、天文学と惑星科学、そして将来は生物学まで含んだ自然科学の主要分野へと発展するだろう。

一般の人から見れば区別がつかないかもしれない天文学と惑星科学だが、両者は手法に大きな違いがあるため、お互いの研究者間ではなかなか話が通じない。しかし、系外惑星の発見によって、もはや天文学だ惑星科学だと言っている場合ではなくなった。両者の境界はなくなり、系外惑星という新しい研究領域が誕生したのである。ただ、研究者の意識は、まだ「天文学的」であったり「惑星科学的」であったりする。新学術領域研究「系外惑星」では、そのような研究者の意識を改め、双方が強く連携・融合して研究を進める。

「系外惑星」では、4件の計画研究が中心となる。観測研究では、ハビタブルゾーン(※)に地球型・木星型惑星の検出をめざすと同時に、木星型惑星を画像として直接撮影し、その大気を分光して特徴を明らかにする。また、惑星誕生の場である原始惑星系円盤の高解像度観測を推進する。これらの観測を、惑星形成および惑星大気の理論研究と融合させ、太陽系内も含めて、地球型・木星型惑星の起源、形成、進化を統一的に理解する。本領域研究によって、宇宙における惑星系の誕生や生い立ち、そして生命の起源の解明に向けて、新たな一歩を踏み出すことができると信じている。

(領域代表者 林正彦)

※ ハビタブルゾーン
主星からある距離を離れた軌道を周回する惑星を想定したとき、その表面で生命の存在にとって重要な役割を演ずる「液体の水」が存在することができるような大気圧、温度条件を実現する惑星軌道の範囲。たとえば太陽系では、地球はハビタブルゾーンにあって液体の水が存在するが、金星はハビタブルゾーンから外れているため、水は水蒸気として存在している。